解説文 |
第32回日事連賞国土交通大臣賞表彰理由:今年度の国土交通大臣賞は、2世帯4世代が一敷地に 生活する住宅、たまプラーザの家です。そこには、核家族 とは別の、これからの家族の住まいのプロトタイプが提案 されています。敷地は雛段状に造成された、歩車分離の 思想で区画割された余裕のある面積90坪の住宅地で、前面と歩行者の緑道の間には2mほどの落差があります。そ の土地の落差と建蔽率40%という法規制が生む60%の空地に着目し、生活が滲み出す街路や庭をつくっています。 2世帯4世代が集まって一敷地に住むからこそ生まれる、 家族の生活の分離と交流の豊かな枠組みが立体的な空間 構成と行き届いた美しいディテールで設計されています。 南北2本の道路をつなぐ中央の街路空間の構成がこの計画の鍵ですが、取りつくそれぞれの部屋の4つのブロック の大開口が街路に向かってズレて対角方向に配置され、光や緑、空気を室内に呼び込んでいます。多世代住居の世帯間の生き生きとした関係が実際に創り出されていること が現地で確認され、感心したところでした。一方で、すでに設計者に経験がある、外部の木製サッシュや軒庇の処理等、耐久の面から少々心配な点も審査委員から指摘さ れましたが、敷地全体を使って生活する日本住宅の家と庭 の関係をこの90坪の敷地の中に現代的な解釈で取り戻し、 そこに世代間が助け合う古くて新しい家族の新たな枠組みを盛り込み、創造的な住まいのプロトタイプを提出した設計者の意欲と力量が評価され、国土交通大臣賞として選定されました。この多世代住宅のあり方は、現在の日本社 会が直面している家族のあり方、在宅医療、保育といった問題にも、光を投げかけるものだと思います。
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