解説文 |
国土交通大臣賞は、坂の街長崎の地形を生かした、子どもたちの遊び心を誘い出す、あたご保育園である。長崎の街を見晴らす、もともと棚田として造成され、取り残された敷地を、構法、コスト等の側面から理性的に解釈し、素直に平面計画を練り上げ、感性的な造形の魅力に加え、子どもの想像力を引き出すような場所が、そこここに体現した保育園であることが評価された。若い設計者でありながら、材料の選択なども堅実で、破綻がなく、機能的にも隅々までよく考えられており、一貫して生き生きとした感覚のリズムが流れている素晴らしい建築である。この地で建築士事務所を長年やってきたという、父親のバックアップがよく働いたのかもしれないが、長崎特有の立体的な街の豊かさを増幅するようなこうしたキラリと輝く個性的な建築のあり方を見る時、この日本の豊かな風土を解釈し、通り一遍ではない、〈ここにしかない場所〉をつくりあげる努力、そして地方に腰を据え活動する建築士事務所の仕事の意味、その重要性がクローズアップされることを確認し、選考委員一同が感心したのである。
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