解説文 |
この建物は広島県福山市内の保育園の乳児棟です。平屋で極めて小規模の落花生型平面のこの建物は、乳児・ほふく室を中心にその周りにギャラリー、調乳・沐浴の場を含んだ事務スペースが相似型に取り囲んでいる平面構成となっているワンルームの空間です。この建物では、乳児の活動に対応した緩勾配の床をもつ乳児・ほふく室と周りのギャラリー等の外周部は乳児の目線のレベルに合わせて異なった床高になっており、乳児を見下げる視線を避けるよう計画されている等、様々な構成上の工夫がなされています。ワンルームの架構において、外周面に壁のない開放的空間の構成のために外周部の接線と垂直方向に積層材の壁柱を配置していますが、このことで、鉛直、水平荷重に対応させる等、合理性の高い構造形式を提案しています。このように、この建物は、柔軟なデザインに満ち溢れた設計によって保育園としての魅力的な空間を形成しているに留まらず、従来の形式化した建築の構成を積極的に検討して、新たな建築の空間の可能性を示したものとして特に評価され国土交通大臣賞に選定されました。
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