解説文 |
日事連会長賞は、銀座のわずか115 坪の敷地に建てられた、地下2 階、地上13 階の老舗の文具店の建て替えである。中央通りに面した、2 枚の壁のファサードと、そのプロポーションの良さやエレガントな美しさは竣工当時から目にしていたが、何気ないこの小さなビルの内部には、背後に建築的な知性がいっぱいに閉じ込められ、こうした現実の姿に至ったことが分かる。8m という狭い間口を開放し、背面の通りへと貫通するガレリア(みち)を銀座の街に提供している。室内化するという当初のコンセプトのもとに、構造、設備、防災、法規的制約の一つずつが解決され、とにかく〈ガレリア〉を最大化しシンプルに見せるという1 点に、デザインの興味は集中している。狭い敷地であるが故に、建築構成の緻密さと現代の高い技術力が、この建築の中に結集したかのように見える。設計者の知性と感性の爽やかさとその力量を感じさせる作品である。また、このデザインを支えている文房具店の枠を超えた、都市生活者のオアシスを目指す依頼主や企画者の高い見識も注目されるところである。
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