解説文 |
日事連会長賞は、北海道函館市内の住宅街に佇む礼拝堂である。以前はホテルが建っていたという不整形の敷地を見事に整然と使いこなし、アプローチ、駐車場、そして近隣住宅との境界の植栽スペースを、幾何学的な構成の礼拝堂が切り分け、違和感のない、気品ある姿を見せている。この場所に、静けさや厳かさを生み出すことは容易ではない。 礼拝堂は、家型切妻の覆いと何枚かの壁の構成であり、平面も極めてシンプルであるが、内部に展開する空間のスケールの抑揚、そして中庭を核とする場の閉鎖と開放のリズム、光の強弱が考えられていて、デザインの教養とセンスが感じられ、的確である。シンプルだといっても決して無味乾燥ではなく、そこに心穏やかに祈りへと向かう人間のリズムが形成されている。 素朴な祈りの空間の実現というイメージに向かってディテールもよく練り上げられ美しい。また、厳しい気候による実用上の問題と、美的な側面からシンプルに解決しようとする周到な検討も、選考委員の注目するところであった。 人間が技術と知恵を絞って考えていること、床材がシラカバで、コンクリートの梁型が拍子を創る、内壁にトドマツ材のルーバーを施した礼拝堂の空間はもちろんであるが、白木と北国の柔らかな自然光に包まれた、控え目でけれん味のないこの小さな礼拝堂が心を込めて造りあげられていることが評価された
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