DAAS関連の取材などの動画集です。じっくりご覧ください。

UIA2011 TOKYO 「 デジタルアーカイブの可能性 : Future of Digital Archive 」

3.11以降の日本の景観*都市*建築のあり方を若手建築家、研究者が提言する」
( Proposals by Young Architects and Research Specialists Towards Land Scape, Urbanism and Architecture, After 311, in Japan )

Session6 倉方俊輔 × 本江正茂

配 信 : mosaki 大西正紀 / 田中元子
主 催 : 建築・空間デジタルアーカイブスコンソーシアム
協 力 : 宮城大学中田研究室 / 首都大学渡邊研究室 / アーキエイド 他
司 会 : 坂本和子


2011年9月28日 UIA2011東京大会 関連イベントとして東京国際フォーラム ガラスホール棟ロビーギャラリーにてトークセッションが行われました。アーカイブについて、DAASの資料について、リレー形式でセッションを行いました。聞き手が次の話し手となり聞き手は資料の魅力や価値の所在を話し手から引きだし次世代に残すべき議論として記録していきます。

Session6———————-
話 し 手 : 倉方俊輔(建築史家, 大阪市立大学准教授)
聞 き 手 : 本江正茂(東北大学准教授, せんだいスクール・オブ・デザイン)
レポート : 田中元子(mosaki)
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 倉方氏は、雑誌「日経アーキテクチュア」にて連載中に「ドコノモン100選」
で巡ってきた建物の紹介を中心にプレゼンを展開。この連載では、だれものものどこのモノかわからない、けど魅力的な建物に注目する。有名なものだけではなく、そのようなものに踏み込んでみると、そこには新しい発見があるという。「海中展望塔:足摺海底館」や「ニュー新橋ビル」を題材に、その背景に潜む美的、都市的、歴史的エピソードを様々な角度から説明していった。これまで「地」におとしめられていた無名の建物たちに、実は見るべき「図」がありますよ、とピックアップする。倉方氏が意識的に行うことは、前セッションの大山氏の取り組み方と、然程変わりがないという。そして、例え対象が有名建築家の設計による建物であっても、それを庶民のレベル、きれいごとではないところから見ていきたいという。

 それに本江氏は、倉方氏が専門的な眼差しを持ちつつピックアップし、そこから物語によってつなげ、間をつくろうとしていることが重要なポイントだという。まさにその間をつくること、物語をつくることが冒頭で述べ忘れたもうひとつのDAASに足りないものと指摘した。アーカイブはそのままでは取りつく島がない。それぞれのアーカイブを使っていく有益なものにするためには、物語、つまり魅力的な話を付けていく人が必要だと。

 数年前から大学の教職に就いた倉方氏は、それが広義の歴史家としての仕事かもしれないとも言う。歴史家だけが担保するものではないが、一般の人がその物語を紡ぎ考え、そこから変換しさらに物語が膨らむようにしむけることができる。そういう意味でも歴史家のアーカイブに対する役割も大きくなる。

 最後は、評価における言葉の話題となった。いつの時代も過去のものを再評価したときに、やっと言葉が追いついてくると倉方氏。本江氏は、そういう意味では今々のアーカイブには物語がないことは、やむをえない。“いずれ言葉がついてくる。今はわからないから後の人頼むよ!”という面もあるのだろうとまとめた。

ー最後に全体のまとめとして、会場に最後まで残っていらした登壇者の感想を頂いたー

ー倉方氏ー
今回の試みは6回対話が繰り返されていく中で、そこで生まれた語りが、さらに語られることが面白かった。語ることの差が新しく語りを生む。その核となるものが資料や写真といったアーカイブということだ。

ー本江氏ー
真珠をつくるときに最初に入れる核のように、アーカイブにおいては正統性と持つDAASが核となる。そのためにDAASは、コアとなり周りにさまざまなものを付けていけるインターフェイスとサービスを持たなくては行けない。そこへ専門家もさまざまなコンテンツを加えていき、それらがB級呼ばわりされることなく開かれていくのがいいだろう。アーカイブというものは求心的な営みだと思われがちであるが、むしろそれが外へつながる力が必要。そのためにもモザイクのガイドライン等をはじめとしたデジタルの形を整えたインターフェイスをつくる。これからのアーカイブを考えていく人たちは、外向けの力をつくることを意識し、僕らはそのアーカイブに忘れてしまいがちな記憶をあずけていく。そういうシステムをみんなでつくっていければいいと改めて思った。

ー渡邊氏ー
誰でもデジタルアーカイブをつくれる時代になった。これまでは拠り所がなく、他人のアーカイブに依って立っていた時期から、自分自身のアーカイブから言葉を紡げる、良い時代になった。例えば、iPhoneで自分の写真をめくっていると自分の歴史を辿ることができる。これは言い換えると、人類の人数分のアーカイブが存在するということ。さらにこれらのアーカイブにGPS情報がついているから、その土地土地でアーカイブをスライスすることができる。そこにストーリーが見えるとより人類は幸せになるのではないか。

ー大山氏ー
アーカイブが何なのか。さまざまな意見を聞いて僕が一番思ったのは、アーカイブそのものには語りが入らないということ。しかし、僕らがアーカイブをテーマに語ったことは語りであった。アーカイブは、僕らを誘うものとして存在してほしい。

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